米国市場では、量子コンピューティング/ポスト量子セキュリティ関連銘柄が金曜日に大きく動きました。私が保有している IONQ(IonQ, Inc.)、LAES(SEALSQ Corp.)、および RGTI(Rigetti Computing, Inc.) が目立つ急騰を見せました。せっかく保有しているのだから、各社の動きとその背景、そして今後の注目点をまとめてみます。
IONQ(IonQ, Inc.):英国スタートアップ買収承認が引き金
株価急騰の要因
金曜日、IONQ株は英国のスタートアップ Oxford Ionics の買収計画が、英国の Investment Security Unit(英国の対外直接投資および安全保障監督機関) によって認可されたことを発表。これにより、買収が正式に進められる見込みとなり、株価は一時17~20%近く急上昇しました。
また、IONQはアナリスト・デイでの発表で、自社を「量子分野での資本力と技術蓄積が突出している企業」と位置づけ、政府契約やサイバーセキュリティ分野への進出も強調しています。
業績・リスク・今後の見どころ
- ポジティブな点: 買収による技術・人材補強が期待される。資本力を背景に複数案件を進行中であり、量子キー配布(QKD)ネットワークなどサイバーセキュリティ領域への拡大も。
- 注意点: 買収のコスト、統合リスク、量子コンピューティング事業全体の収益化までの道のりの長さ。業績赤字およびキャッシュ消費が継続しており、市場の期待が先行している可能性あり。
- チェックポイント:
- Oxford Ionics買収が完了するかどうか
- 買収後のコスト構造・統合シナジー
- 次の四半期での収益見通し(ガイダンス)と技術成果(量子精度、キュービット数、エラーレートなど)
LAES(SEALSQ Corp.):ポスト量子セキュリティの期待を反映
なぜ急騰したか
SEALSQ(ティッカー:LAES)は、ポスト量子抵抗(post-quantum)セキュリティを中心とした半導体・暗号化技術を扱う企業です。金曜日には約8–9%の上昇を記録し、その要因として次のような材料が指摘されています:
- H1 2025決算報告での良い見通し提示。現時点の収益が市場予想を上回っており、通年(FY2025)の売上予想を引き上げ、年率での成長を強調。
- キャッシュ余力の改善と買収活動。IC’ALPS(フランスのASIC設計会社)を買収、また post-quantum TPM(Trusted Platform Module)などの製品開発や政府・規制機関からの要件の高まりが追い風に。
- ポスト量子暗号化・IoTセキュリティへの注目度上昇。量子コンピュータの進展により現行の暗号方式が将来脅かされるという意識から、量子耐性暗号(post-quantum cryptography: PQC)関連企業への関心が強まっている。LAESはそれを実際の製品/認証取得で応えている。
業績・リスク・今後の見どころ
- ポジティブな点: 規模は小さいながらもニッチな領域で先行しており、政府・規制による需要が支えになる点。認証取得(NIST、FIPS など)、製品ロードマップ(TPM、VaultIC など)の進捗が具体的であり、中小投資家の注目を集めやすい。キャッシュリザーブが比較的豊富という報道もあり、急な資金繰りリスクは一定抑えられている。
- 注意点: 流動性が低い、株価の上下振れが大きい、製品認証/規制対応に時間を要する可能性。売上がまだ小規模であり、利益率もマイナス。市場期待が先行しているときは過剰に跳ねることも。
- チェックポイント:
- 次期決算での売上・ガイダンスの達成度
- 製品認証(NIST・FIPS等)/政府関連案件受注状況
- 買収統合の効果(IC’ALPS等)や地域展開(UAE等のJV)進捗
RGTI(Rigetti Computing, Inc.):量子技術期待 + セクター全体の高まり
急騰の背景
金曜日、RGTIも 14~20%前後 の上昇を記録。IONQ・LAESと同様に、量子セクター全体のセンチメントが改善したことと、RGTI自身の技術ロードマップに対する期待が合わさりました。
具体的には、Rigettiは スーパーコンダクティング方式の量子プロセッサ や クラウド量子コンピューティングの提供 の強化を進めており、技術的目標(qubit数拡大、エラーレート改善など)の発表が市場に好感されていると考えられます。
さらに、中央銀行や政府の利下げ期待、金利の先行き緩和見通しなどがリスク資産への資金流入を促し、ハイボラティリティ銘柄、特に量子株などに波及効果をもたらしたという見方もあります。
強み・リスク・見通すポイント
- 強み: 技術的ポテンシャルが高く、将来性に対する期待が高い。スーパーコンダクティング方式の量子プロセッサや、クラウドアクセスによるビジネスモデルが拡大可能。量子技術への政府支援もプラス。
- リスク: 安定収益までの道のりが長く、実用フェーズでのコスト/収益バランスが不透明。株価の変動が激しく、ニュースや期待外れの結果で急落の可能性あり。
- 注視すべき点:
- 次の四半期での技術マイルストーン達成(qubit数・ゲート精度など)
- 収益モデルの進捗(クラウド収益/契約獲得)
- セクター全体の金利・政策の動き(利下げ期待や政府の技術投資等)
まとめ
量子コンピューティング/量子耐性セキュリティ分野の銘柄は、期待値 × 技術進展 × 規制・認証が株価を動かす要因となります。IONQ・LAES・RGTI の動きを見て、以下のことが言えます。
項目 | 短期要因 | 中期~長期要因 |
---|---|---|
急騰トリガー | 買収/承認/認証取得/規制政策の動き | 技術ロードマップの達成、収益モデルの明確化 |
リスク | 過大な期待、不透明な統合コスト、規制の遅れ | キャッシュ燃焼/競争激化/技術実用性の課題 |
投資戦略 | 小口でのエントリー・リスク管理を重視 | ポートフォリオの一部として、配分を限定するのも有効 |
特に初心者やリスクを抑えたい投資家は、「PERの高さ」「利益がまだ出ていない企業が多い点」に注意しつつ、技術進展や政策/規制の変化を可視化できる銘柄を選ぶことが肝心です。
最後に:どこに注目するか
- ニュースフローを追うこと
買収/認証/政府政策などが株価を動かすことが多いため、会社のプレスリリースや規制当局の動きは見逃せません。 - 技術の中身を理解する
量子技術では「キュービット数」だけでなく、「エラー率」「接続性」「耐久性(coherence)」「スケーラビリティ」が重要です。 - バリュエーションに慎重になること
株価が期待先行で高騰する銘柄は利益の達成が難しいことも多く、損失リスクも高まります。 - 分散投資を心がけること
量子関連はハイリスク・ハイリターンの分野なので、ポートフォリオ全体の中で適切な比率に抑えるのが安全です。
量子関連株の波は、たびたび大きなうねりを伴います。IONQ・LAES・RGTI はそのうねりの中心にいる銘柄です。急騰の背景を理解し、冷静に見極められる目を持つことが、今後の成功の鍵となるでしょう。
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