JUST KEEP BUYING要約と感想|個別株は買うな

投資本レビュー

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はじめに|結論は「ただ買い続けろ」の一点

『JUST KEEP BUYING』の結論は、タイトルそのままです。収入が入るたびに、余ったお金でひたすら買い続ける。タイミングを計らない。それだけ。そのうえで著者は「個別株は買うな」「安値を待つな」と、かなり強い言い方で断言します。

この記事では、本書に何が書いてあるのか(要約)と、AIに個別株を売買させて負け続けている私が読んでどう感じたか(感想)を、これから積立を始める方に向けてまとめました。先に私の結論を書いておくと、これから新NISAで積立を始める人には強くおすすめできる一方、個別株で勝負したい人にはかなり耳の痛い本です。私は後者寄りなので、読んでいて何度か手が止まりました。

この記事を書いた人|ひざき

米国株をメインに資産運用中。AIと一緒に自動売買システムを自作し、ペーパー口座(シミュレーション)での売買実績を毎週そのまま公開しています。自分の資産額も毎週公開中。新NISAは毎年満額まで使っています。投資本は月2冊ペースで読んで記録しています。専門家ではなく、いま実際に手を動かしている個人投資家の目線で書いています。→ プロフィール

『JUST KEEP BUYING』の基本情報

まず本の素性から。著者のニック・マジューリ氏は、米国の資産運用会社 Ritholtz Wealth Management の最高執行責任者(COO)兼データサイエンティストで、スタンフォード大学で経済学の学位を取得しています。データ分析に特化した個人向けマネーブログ「OfDollarsAndData.com」の書き手としても知られる人です(ダイヤモンド社 公式書籍ページ・2026年8月時点)。

書名 JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則
著者 / 訳者 ニック・マジューリ 著 / 児島 修 訳
出版社 / 発行 ダイヤモンド社 / 2023年6月
ページ数 / 価格 420ページ / 1,870円(税込)
構成 第1部「貯金力アップ篇」(第2〜9章)、第2部「投資力アップ篇」(第10〜20章)
出典: ダイヤモンド社 公式書籍ページ(2026年8月時点)。価格は改定される場合があります

420ページとそれなりに厚いのですが、章ごとに独立した問いに答える形なので、気になる章だけ拾い読みできます。前半は貯金の話、後半が投資の話です。米国株の話が読みたい人は、第10章からいきなり読んでも問題ありません。

※本書は不動産・農地・ロイヤリティ・エンジェル投資など幅広い資産クラスを扱いますが、筆者(ひざき)が実際にお金を入れているのは株式(米国株・ETF・投資信託)だけです。それ以外の章については、実体験ではなく本の内容の紹介にとどめます。

要約①「貯金と投資、どちらを頑張るべきか」に数字で答えている

第1章でいきなり、多くの入門書が曖昧にしてきた問いに答えます。「お金がない人は貯金を、お金がある人は投資を重視すべき」という単純な線引きです。

当たり前に聞こえますが、これが効くのは理由がはっきりしているからです。資産が100万円の人が運用利回りを1%改善しても年1万円ですが、月の支出を1万円削れば年12万円。資産が小さいうちは、リターン改善より貯蓄率のほうが効果が大きい。逆に資産が大きくなるほど、運用の巧拙が効いてきます。

ここは私も反省したところで、資産が小さかった頃の私は、銘柄選びに何時間もかけて、家計にはほとんど手をつけていませんでした。順番が逆だったなと思います。

要約②「個別株は買うな」— AIに個別株をやらせている私には刺さった

第12章のタイトルはそのまま「個別株は買うな ── 個人投資家を焼き尽くす投資哲学」です。理由は大きく2つ挙げられています。

  • 金融論的な理由: 個別株はインデックスに比べてリスクが集中しているのに、その分リターンが上乗せされる保証がない
  • 存在論的な理由: 自分の銘柄選びが上手いのか運が良かったのかを判別するには、非常に長い年月のデータが必要で、生きている間に答えが出ない可能性がある

2つ目の指摘が個人的にはこたえました。「うまくいっているのか判定できない活動に、人生の時間を注ぎ込むことになる」という話です。

私はいま、AIと一緒に作った自動売買システムを moomoo のペーパー口座(シミュレーション)で動かしています。2026年8月16日時点で確定トレードは10回、うち勝ちは1回、確定損益は合計 -1,188.45ドルです(実際の資金による売買ではありません)。数字だけ見れば、この本の主張に完全に負けています。詳しい経過はAI自動売買まとめにそのまま出しています。

ただ、私はこの検証をやめるつもりはありません。理由は本書が言う「時間の浪費」と自分の目的がズレているからです。私がやっているのは資産を増やすための個別株投資ではなく、AIと売買システムを作るという実験で、本資産のほうはインデックスと高配当ETFに置いています。目的が違うものを同じ土俵で比べる必要はない、というのが私なりの折り合いのつけ方です。とはいえ「これは投資ではなく実験だ」と自分に言い聞かせている時点で、本書の指摘は半分当たっているのだろうな、とも思います。

要約③「安値を待つな」— 分割投資は開始月の80.6%で一括投資に負けた

本書でいちばん数字が濃いのが、第13章「いつ投資すべきか?」と第14章「安値を待つべきではない理由 ── 神でさえ『ドルコスト平均法』には勝てない」です。

論点はシンプルで、まとまったお金があるとき、今すぐ全額入れる(一括投資)のと、何ヶ月かに分けて入れる(分割投資)のと、どちらが有利か。著者自身がブログで公開している検証結果は次のとおりです。

検証条件 結果
S&P500に24ヶ月かけて分割投資(1997年以降) 開始月の80.6%で一括投資に負けた。平均で約10%の劣後
他の資産クラスでも同様(1997〜2022年) 検証した全資産クラスで、平均4%以上の劣後
分割投資が勝った局面 1974年・2000年・2008年など、相場が下落した時期のみ
値動きの振れ(標準偏差) 一括投資のほうが大きい。分割投資は常に一部が現金なので振れが小さい
出典: 著者ニック・マジューリ氏のブログ Of Dollars And Data「Dollar Cost Averaging vs Lump Sum」(2023年2月・2026年8月に内容を確認)。過去の実績であり将来を保証するものではありません

元データは著者本人の記事(Of Dollars And Data)で図表つきで公開されているので、英語ですが確認できます。

大事なのは最後の行です。「一括投資のほうが有利だが、値動きの振れは大きい」と著者自身がはっきり書いています。「一括のほうが儲かる」という話だけが独り歩きしがちですが、リスクは確実に上がります。ここを飛ばして紹介している要約記事が多いので、あえて表に入れました。

そして著者は、分割投資が勝つのは下落局面だけだと示したうえで、こう続けます。「相場が下がっているときこそ、人は買い続けられない」。分割投資が有利になるまさにその局面で、多くの人は手が止まる。この一文が、この本でいちばん現実的な指摘だと思いました。

日本の新NISAでは、この本の通りにはできない

ここが、日本の読者として一番ひっかかったところです。本書は「手元の資金は今すぐ全額入れろ」と言いますが、日本の新NISAは制度上それができません。

新NISAの年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用しても年間360万円が上限(生涯の非課税保有限度額は1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円まで)です(金融庁 NISA特設ウェブサイト・2026年8月時点)。つまり1,000万円を持っていても、非課税枠に一括で入れることは制度として不可能です。

この本を読んで「よし、一括投資だ」と課税口座に全額入れる前に、非課税枠を何年かけて埋めるのか、その間の資金をどう置くのかを考える必要があります。本書は米国の読者向けに書かれているので、この制度差は自分で埋めるしかありません。私自身は「新NISAの枠は毎年できるだけ早い時期に埋める」という折衷案に落ち着いています。年内に埋めきることが、私にできる範囲での”できるだけ早く”だからです。

「いつ売るか」にも1章割いているのが良かった

買い方の本は多いのに、売り方を書いた本は少ない。その点、第18章「いつ売ればいいのか」で売っていい場面を3つに限定しているのは実用的でした。リバランスのため、集中しすぎたポジションを解消するため、そして自分の生活のためにお金が必要なとき。「株価が高いと思ったから」は入っていません。

売り時の考え方については、私自身も自分なりの基準を記事にしています。あわせて読むと整理しやすいと思います。→ 利確ルールの決め方|初心者が売り時に迷わない基準 / 損切りルールの決め方

この本が向いている人・向いていない人

向いている人 向いていない人
これから積立を始める / 始めたばかりの人 個別株の銘柄選びの技術を学びたい人
「今は高いから待とう」で毎回買えていない人 すでにインデックス投資を淡々と続けられている人(答え合わせにはなる)
まとまったお金をどう投資するか迷っている人 日本の税制・NISA前提の具体的な手順書がほしい人
データで納得しないと動けないタイプの人 短期で結果を出す手法を探している人

なお本書は、個別のETFや投資信託を名指しで「これを買え」とは書いていません。具体的な商品選びまで求めている方には物足りないはずです。米国ETFの選び方は高配当ETF比較まとめのほうが実務的だと思います。

よくある質問

Q. JUST KEEP BUYINGは投資初心者でも読めますか?

読めます。専門用語には都度説明があり、数式もほぼ出てきません。ただし420ページあるので、最初から通読しようとすると挫折しやすいです。気になる章のタイトルだけ見て、そこから読むのがおすすめです。米国株の話は第10章以降にまとまっています。

Q. 「個別株は買うな」は、個別株を全部やめろということですか?

本書の主張としては、資産形成の中心に個別株を据えるべきではない、ということです。趣味や検証としてやること自体を禁じているわけではありません。ただし著者は「自分の腕なのか運なのかを判別できない」という点を重く見ているので、本気で資産を増やす目的なら勧めない、という立場だと読めます。

Q. 日本の新NISAでも「一括投資」したほうがいいですか?

制度上、非課税枠への一括投資はできません。年間の投資枠がつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円と決まっているためです(金融庁・2026年8月時点)。また一括投資は値動きの振れが大きくなる点も著者自身が認めています。ここは「どちらが正解」ではなく、下落したときに自分が耐えられるかで決める部分だと私は考えています。

Q. 『サイコロジー・オブ・マネー』とどちらを先に読むべき?

投資を始めるかどうかで迷っている段階なら『サイコロジー・オブ・マネー』、すでに始めていて「どう入れるか」で迷っているなら本書が先だと思います。本書は前者の著者モーガン・ハウセル氏が推薦している縁もあり、内容は重複せず補い合う関係です。

Q. 結局、この本を読むと何が変わりますか?

「買うタイミングを考える時間」が減ります。これが最大の効用だと思いました。相場を見て買う・買わないを判断する回数が減るぶん、家計と入金力に意識が向きます。逆に、銘柄選びの技術は1ミリも上がりません。

まとめ

『JUST KEEP BUYING』は、「タイミングを計らずに買い続ける」という一点を、130年分のデータで殴り書きした本です。目新しい結論ではありません。ただ、なぜそうすべきかを数字で示されると、納得の深さが変わります。

  • 資産が小さいうちは貯蓄率、大きくなったら運用が効く(第1章)
  • 個別株は「上手いのか運なのか」を判別できないまま時間を使う(第12章)
  • 分割投資は開始月の80.6%で一括投資に負けた。ただし振れは一括のほうが大きい(第13〜14章)
  • 売っていいのは3つの場面だけ。「高いと思ったから」は入らない(第18章)

私にとっては、AIに個別株を売買させている自分の活動を、正面から否定してくる本でした。それでも読んでよかったと思うのは、「これは投資ではなく実験だ」と自分の中で線を引き直せたからです。本資産はインデックスと高配当ETFで淡々と積む、個別株の実験はペーパー口座で分けてやる。この整理ができただけでも、1,870円の元は取れました。

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投資本レビューのシリーズは他にもあります。あわせてどうぞ。→ 『敗者のゲーム』書評

免責事項

本記事は書籍の紹介および情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品・投資手法の購入や実行を推奨するものではありません。株式・ETF・投資信託への投資には価格変動リスクがあり、元本割れの可能性があります。本文中の書籍情報(価格・ページ数)、検証データ、新NISAの制度内容などの数値は2026年8月時点のもので、改定や市況によって変動します。本文で紹介した過去のデータは将来の運用成果を保証するものではありません。最新の情報は、ダイヤモンド社および著者の公式サイト、Vanguard・iShares(BlackRock)・State Street(SSGA)・Schwab等の各運用会社および各証券会社の公式情報、ならびに金融庁・国税庁の公表資料でご確認ください。税制の取り扱い(外国税額控除・確定申告の有利不利など)はご自身の状況によって結論が変わります。個別の税務相談は税理士等の専門家にご相談ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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