含み益が出ている株の画面を開いたまま、「今売るべきか、もう少し持つべきか」で手が止まった経験はありませんか。
はじめに
この記事は、株を買ったあとの売り時を決められない初心者の方に向けたものです。結論から書くと、利確(利益確定)のルールは「目標株価型」「リスクリワード型」「トレーリング型」の3つしかありません。どれを選んでも構いませんが、買う前に1つ決めておくことだけが共通の正解です。売ったあとに株価がどう動くかは誰にも当てられないので、「当てる」のではなく「決めておく」しか方法がないからです。
この記事を読むと、3つの型の違いと選び方、そして私が自作したAI自動売買システムが実際に使っている利確ルールの中身が分かります。あわせて、そのシステムの成績が現時点でマイナスだという正直な数字も載せました。
タイミングとしても、いま利確の話は他人事ではありません。S&P500は2026年8月4日に前日比+1.79%の7,736.52ポイントで引け、約2か月ぶりに史上最高値を更新しました(出典: OANDA証券・2026年8月5日)。含み益を抱えて売り時に迷う人が、いちばん増える局面です。
なぜ利確は損切りより難しいのか
「利確なんて、嬉しい悩みでしょう」と思われるかもしれません。でも実際にやってみると、利確のほうが損切りより迷います。損切りは「痛いけれど、やることは決まっている」のに対し、利確は売っても正解、売らなくても正解に見えるからです。
行動経済学には、これを説明する有名な現象があります。ディスポジション効果(処分効果)と呼ばれるもので、投資家は含み益のある株は早く売り、含み損のある株はいつまでも抱え込むという偏りです。Shefrin and Statman(1985)が提示し、Odean(1998)が大手証券の1万口座の取引記録を分析して実際に確認しました(出典: 日本証券経済研究所「投資家のディスポジション効果、短気と移り気」)。
背景にあるのはプロスペクト理論です。利益が出ている場面では人はリスクを避けたくなり(=早く確定したくなり)、損が出ている場面ではリスクを取りたくなる(=戻るまで待ちたくなる)。この2つが同時に働くと、利益は小さく、損失は大きくという最悪の組み合わせになります。私自身、これは何度もやりました。+5%で満足して売った銘柄がその後倍になり、-20%の銘柄は「まだ戻る」と言い聞かせて持ち続けていた、という具合です。
つまり利確ルールとは、儲けを最大化する魔法ではなく、この人間の偏りを打ち消すための仕掛けです。だから「その場の判断」ではなく「事前の約束」でなければ意味がありません。損切り側の考え方は損切りルールの決め方にまとめてあるので、まだ決めていない方はそちらを先に読むことをおすすめします。
利確ルールの3つの型

1. 目標株価型 — 買う前に売値を決める
いちばん単純な型です。「+20%になったら売る」「株価40ドルで売る」と買う瞬間に決めて、そのまま指値注文を置いておくだけ。あとは相場を見なくて済みます。
日中に株価を見られない会社員の方には、この型がいちばん現実的だと思います。弱点は、たまに来る大化け(いわゆるテンバガー)を必ず取り逃すこと。ただ、「大化けを取り逃す」と「毎回迷って何もできない」を比べたら、前者のほうがはるかにマシです。
2. リスクリワード型 — 損切り幅の何倍で売るかを決める
損切りまでの値幅を「1R」と呼び、その2倍(2R)や3倍(3R)の利益が出たら売るという決め方です。たとえば100ドルで買って95ドルで損切りするなら、1R=5ドル。2R=110ドル、3R=115ドルが利確ラインになります。
この型の良いところは、勝率が低くても成立すること。3Rで利確し1Rで損切りするなら、4回に1回勝てば損益はほぼトントンです。逆に言うと、先に損切り幅を決めていないとこの型は使えません。順番は必ず損切りが先、利確が後です。
3. トレーリング型 — 上がっている間は持ち続ける
利確ラインを固定せず、株価の上昇に合わせて売却ラインを引き上げていく型です。判断材料には移動平均線(一定期間の株価の平均をつないだ線)や直近の安値がよく使われ、それを割り込んだら売るというルールにします。
上昇トレンドが続く限り持ち続けられるので、大化けを取り逃しません。弱点は、必ず天井から何%か戻ってから売ることになる点です。「あそこで売れたのに」という後味の悪さに耐えられるかどうかで向き不向きが分かれます。
| 型 | 売るタイミング | 向いている人 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 目標株価型 | 決めた株価・騰落率に届いたら | 相場を見る時間がない人 | 大化けを必ず取り逃す |
| リスクリワード型 | 損切り幅の2〜3倍の利益が出たら | 数値で管理したい人 | 損切り幅が甘いと機能しない |
| トレーリング型 | 移動平均や直近安値を割ったら | トレンドに乗りたい人 | 天井から戻してから売ることになる |
私のAI自動売買が使っている利確ルールと、その成績
ここからは実例です。私はAI(Claude)と一緒に米国株の自動売買システムを作り、moomooのペーパー口座(シミュレーション)で動かしています。実際の資金による売買ではなく、売買推奨でもありません。しくみと全実績はAI自動売買まとめにあります。
このシステムの売りルールは、上の3つのうち2と3のハイブリッドです。
- トレーリング型: 21EMA(直近21日の株価を平均した線)の安値を終値で割り込んだら、全株売る
- リスクリワード型: 3R(損切り幅の3倍)に到達したら、保有の3分の1だけ先に利確する
なぜ3分の1だけなのか。全部売ると「その後もっと上がったら」という後悔が残り、全部持ち続けると「利益がゼロに戻ったら」という不安が残るからです。分割で売ると、どちらの後悔も半分になります。人間側の心を守るためのルールで、期待値を上げるためのものではありません。
直近の確定トレードは次のとおりです(2026年8月7日時点)。
| 銘柄 | 期間 | 損益 | 売却理由 |
|---|---|---|---|
| TGTX | 7/24→8/1 | -6.12% | 21EMAの安値割れ(トレーリング) |
| BRKR | 8/1→8/5 | -19.70% | 21EMAの安値割れ(トレーリング) |
| FTRE | 7/8→8/7 | +2.54% | 21EMAの安値割れ(トレーリング) |
そして正直な数字です。確定トレードは10回で1勝9敗、勝率10%、累計損益は-1,188.45ドル(2026年8月7日時点)。ルールがあることと、そのルールが儲かることは別だという実例として受け取ってください。ルールのおかげで一撃で大損する取引はゼロですが、勝率が低すぎて全体ではマイナスです。3Rの利確に届く前に21EMAを割ってしまうケースが多く、そもそも銘柄選定のほうに問題があると考えています。
システムが実際に選んだ銘柄の中身についてはBLMNとは?AIが選んだ外食株ブルーミンブランズを解説で、損切りが続いた週の記録は【実績公開】AI自動売買 第5回で書いています。
初心者がつまずく3つのポイント
順番を間違える
先に利確ルールから決めてしまう人が多いのですが、順番は損切りが先です。リスクリワード型は損切り幅がないと計算できませんし、そもそも「いくらまで損したら降りるか」を決めずに買うのは、出口のない部屋に入るようなものです。
「全部売るかゼロか」で考える
利確は0か100ではありません。半分だけ、3分の1だけ売るという選択肢があります。少額から始めている方は分割しにくいかもしれませんが、その場合は「この銘柄は目標株価型、あの銘柄はトレーリング型」と銘柄ごとに型を変えることで似た効果が得られます。
税金と為替を計算に入れていない
米国株を特定口座で利確すると、利益に対して20.315%の税金がかかります。+20%で売ったつもりが手取りは+16%弱です。NISA口座なら非課税ですが、売った枠がその年のうちに復活しないという別の制約があります。さらにドル建て資産なので、株価が上がっても円高が進めば円換算の利益は目減りします。「何%上がったら売る」の何%は、税引き後・円換算で考えると現実に近づきます。
なお、暴落時に恐怖で売ってしまうのは利確ルールとは別の問題です。そちらは狼狽売りとは?暴落で売って後悔しないための考え方にまとめました。
よくある質問
Q. 何%上がったら利確するのが正解ですか?
A. 万人に共通する正解の数字はありません。ただ、決められないならまず+20%から始めて、記録を取りながら調整するのが現実的です。大切なのは数字そのものより、同じ数字を何十回も繰り返して自分の傾向を測れることです。
Q. 利確したあとにもっと上がったら後悔しませんか?
A. します。私も何度もしました。ただ、その後悔はルールが間違っていた証拠にはなりません。1回の結果でルールを変えると、判断基準が毎回ぶれて記録も残らなくなります。変えるなら、最低でも20〜30回分の結果を見てからにしてください。
Q. インデックスの積立にも利確ルールは必要ですか?
A. 基本的には不要です。積立の目的は数十年かけて資産を増やすことなので、途中で利確すると複利の効果を自分で止めることになります。利確ルールが必要なのは、個別株や短中期の売買のように「出口を自分で決めないと終わらない」取引のほうです。
まとめ
- 利確ルールは目標株価型・リスクリワード型・トレーリング型の3つ。どれでもよいので買う前に決める
- 人は含み益を早く確定し含み損を抱え込む(ディスポジション効果)。ルールはその偏りを打ち消すための仕掛け
- 順番は損切りが先、利確が後。損切り幅が決まっていないとリスクリワード型は使えない
- 全部売るかゼロかではなく、分割で売ると後悔が半分になる
- ルールがあっても勝てるとは限らない。私のシステムは勝率10%・累計-1,188.45ドル(2026年8月7日時点)
売り時に迷う時間は、そのまま判断の質を下げます。今日のうちに、保有している銘柄1つだけでいいので「いくらになったら売るか」を紙かメモアプリに書いてみてください。それだけで次に相場が動いたときの落ち着きが変わります。
この記事を書いた人
ひざき。米国株をメインに資産運用をしている個人投資家です。AIと一緒に自動売買システムを自作し、その実績(勝ち負けとも)と自分の本資産の増減を毎週公開しています。金融機関に所属したことはなく、専門家ではありません。初心者だった頃に自分がつまずいた点を先回りして書くことを心がけています。
※あくまで個人の見解です。投資の判断はご自分の判断で行なってください。


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