米国ETFの分配金の税金は、米国で10%、そのあと日本で20.315%の二段階で引かれます。100ドルの分配金なら手取りは約71.72ドル、実効税率は約28.3%です。特定口座で受け取った分は、確定申告の「外国税額控除」で米国分の一部を取り戻せます。ただし新NISAで受け取った分配金は、米国の10%を取り戻せません。
この記事は、米国ETFや米国株を買い始めて「口座に入ってきた分配金が、計算より少ない気がする」と感じた方に向けたものです。その差額がどこへ消えたのかを、口座の種類ごとに整理します。
この記事を書いた人|ひざき
米国株をメインに資産運用中。AIと一緒に自動売買システムを自作し、ペーパー口座での売買実績を毎週そのまま公開しています。自分の資産額も毎週公開中。新NISAは毎年満額まで使っています。税理士でも金融の専門家でもなく、いま実際に手を動かしている個人投資家の目線で書いています。→ プロフィール
※本記事は税務の一般的な仕組みを公的資料にもとづいて整理したもので、個別の税務アドバイスではありません。また本文で例に挙げるVYM・HDV・SCHDなどは筆者は未保有です(保有しているのはVTIとSPYDです)。
結論:分配金100ドルの手取りは、口座の種類で変わる
| 口座の種類 | 米国での源泉徴収 | 日本での源泉徴収 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 特定口座・一般口座(申告しない場合) | 10.00ドル | 18.28ドル | 71.72ドル |
| 新NISA(成長投資枠) | 10.00ドル | 0ドル | 90.00ドル |

同じETFを同じ株数だけ持っていても、置いてある口座が違うだけで手取りが18ドル以上変わります。ここを知らないまま「利回り3.5%」の数字を眺めていると、実際に振り込まれる額とのギャップにけっこう驚きます。私も最初は「引かれすぎでは?」と証券会社の取引履歴を何度も見返しました。

なぜ二段階で引かれるのか
米国側:本来30%が、租税条約で10%になっている
米国の会社やETFが米国外の投資家に配当を払うとき、原則の源泉徴収税率は30%です。ただし日米租税条約が適用されると10%まで下がります。この適用を受けるための書類が「W-8BEN」で、日本のネット証券では外国株の口座を開くときに電子的に提出させる形が一般的です(有効期限は原則として署名した年の3年後の年末まで)。
つまり10%というのは、すでに優遇されたあとの数字です。証券会社から「W-8BENの再提出をお願いします」という案内が来たら放置しないほうがいい、というのは覚えておいて損がありません。
日本側:20.315%は「米国分を引いたあと」にかかる
日本の税率20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%です。そしてこれは分配金の全額ではなく、米国で10%引かれたあとの90ドルに対してかかります。90ドル×20.315%=約18.28ドル。合計28.28ドルが引かれ、手元には71.72ドルが残る、という計算です。
特定口座なら「外国税額控除」で一部が戻る
米国と日本の両方で課税されている状態を調整する制度が外国税額控除です。確定申告をして、米国で納めた分を日本の所得税額から差し引いてもらいます。制度の詳細は国税庁が公開しています(国税庁 タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除・令和7年4月1日現在法令等/2026年8月に内容を確認)。
ここで初心者がつまずきやすいのが、「払った10ドルが丸ごと戻ってくるわけではない」という点です。控除できる金額には上限があり、国税庁の計算式では次のようになっています。
- 所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額÷その年分の所得総額)
- 申告には「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」などの添付が必要
- 控除しきれなかった分は、一定の範囲で翌年以降3年間くりこせる
正直に書くと、分配金が年に数千円〜1万円台のうちは、戻ってくる金額より申告の手間のほうが大きく感じると思います。加えて、配当を確定申告に載せると合計所得金額が変わるため、扶養や国民健康保険料の判定に影響することがあります。金額が小さいうちは無理に申告しない、という判断もじゅうぶんアリだと私は思っています。ここは各家庭の状況で結論が変わるので、迷ったら税理士や税務署に確認するのが早いです。
新NISAでは米国の10%を取り戻せない
これがこの記事でいちばん伝えたい点です。新NISA口座で受け取った米国ETFの分配金について、外国税額控除は使えません。
理由はシンプルで、日本側がそもそも非課税だから「二重課税」になっていないためです。国税庁のページでも、外国税額控除の対象とならない外国所得税額として「非課税口座内上場株式等の配当等に対して課される外国所得税額」が明記されています(前掲・国税庁 No.1240/2026年8月確認)。
ただし誤解しないでほしいのは、「取り戻せない=損」ではないということです。上の表のとおり、新NISAの手取りは90.00ドル、特定口座(申告なし)は71.72ドル。日本の20.315%が丸ごと免除されるインパクトのほうが、米国の10%を取り戻せないデメリットよりずっと大きい。私が新NISAを毎年満額まで使っているのは、これを承知したうえでの選択です。
なお、そもそも新NISAでどの米国ETFが買えるのかは商品ごとに違います。買えるもの・買えないものの線引きは新NISAで米国ETFは買える?成長投資枠の対象と除外で整理しているので、あわせて確認してみてください。
円建て投信・東証上場ETFなら「二重課税調整」が自動で効く
もうひとつ知っておくと得をするのが、2020年1月から始まった「投資信託等に係る二重課税調整」という制度です。これは対象商品の分配金について、外国で課された税金を国内の源泉徴収税額から自動で差し引いてくれるしくみで、確定申告が要りません。
| 商品 | 二重課税調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 国内投資信託(円建てのS&P500・高配当ファンドなど)の普通分配金 | 自動で調整される | 不要 |
| 東証上場ETF・REIT・JDR | 自動で調整される | 不要 |
| 海外上場ETF(VTI・VYM・SPYDなど) | 対象外 | 外国税額控除を使うなら必要 |
ただし、この二重課税調整もNISA口座では働きません。日本取引所グループは「対象となる投資信託等をNISA口座で保有されている場合は、国税分は非課税となり、外国との二重課税状態が発生しませんので、本措置の対象とはなりません」と明記しています(日本取引所グループ公式・2026年8月18日更新)。つまりNISA口座では、円建ての投信を選んでも米国分の税金は戻ってこない、ということです。ここは商品を変えても解決しないポイントなので、あわせて覚えておいてください。
制度の対象範囲は日本取引所グループの公式ページで確認できます。要するに、米国に上場しているETFを直接買うと申告が必要、日本の投信や東証ETF経由なら自動、という違いです。「手間をかけたくない」を最優先するなら円建ての投信版を選ぶ、という判断もあります。どのETFを選ぶかで迷っている方は高配当ETF比較まとめ|VYM・SPYD・HDV・SCHDの違いもどうぞ。
私はこう考えて使い分けています
私自身の整理はこうです。新NISAの枠は迷わず使い切る。米国の10%が戻らないのは分かっていますが、日本の20.315%が消えるほうがはるかに効きます。枠を余らせて特定口座に回すほうがもったいない、という考え方です。
そのうえで、枠を超えた分は特定口座(源泉徴収あり)で持っています。ここは分配金が育ってきたら外国税額控除を検討する、という保留状態です。正直なところ、いまの私の分配金額だと申告する手間に見合わないので、まだ手をつけていません。「制度を知っている」と「使う」は別で、使うかどうかは金額と手間のバランス次第だと思っています。
この手の設定まわりは、年に1回まとめて見直すのがラクです。私がやっている点検の中身は新NISAはほったらかしでいい?年1回の点検リストにまとめています。
よくある質問
Q. 米国ETFの分配金、結局いくら引かれる?
特定口座で申告しない場合、合計で約28.3%です。100ドルの分配金なら米国で10ドル、日本で約18.28ドルが引かれ、手取りは約71.72ドルになります(2026年8月時点の税率)。
Q. 新NISAなら分配金の税金はゼロ?
ゼロにはなりません。日本の20.315%は非課税になりますが、米国の10%は引かれます。100ドルの分配金なら手取りは90ドルです。「NISAは非課税」という説明だけを見ていると、ここでズレが出ます。
Q. 外国税額控除を使えば全額戻ってくる?
戻りません。控除には「その年分の所得税額×(調整国外所得金額÷所得総額)」という上限があり、その範囲内での調整になります。所得の状況によっては、ほとんど戻らないこともあります(国税庁 No.1240)。
Q. W-8BENは自分で提出しないといけない?
多くのネット証券では、外国株の口座を開くときに画面上で同意・提出する形になっているので、あらためて紙で出す必要はないのが一般的です。ただし有効期限があり、更新の案内が来ることがあります。放置すると税率が30%に戻る可能性があるので、案内は必ず確認してください。
Q. 円建ての投信版を買えば確定申告はいらない?
分配金の二重課税調整という意味では、国内投信や東証上場ETFは自動で調整されるため申告は不要です。ただし他の理由(複数口座の損益通算など)で申告が必要になる場合はあります。断定はできないので、ご自身の口座状況で確認してください。
まとめ
- 米国ETFの分配金は米国10%+日本20.315%で、手取りは約71.72%(実効約28.3%)
- 特定口座なら確定申告の外国税額控除で米国分の一部が戻る。ただし上限あり
- 新NISAでは米国の10%は取り戻せない。それでも手取りは新NISAのほうが多い
- 円建て投信・東証上場ETFは二重課税調整が自動、海外上場ETFは対象外
「非課税」という言葉は、日本の税金についての話です。ここを分けて理解しておくと、分配金の入金額を見たときにモヤモヤしなくなります。私はこれを知ってから、利回りの数字を見るときに頭の中で0.72を掛けるクセがつきました。
この記事を書いた人|ひざき
米国株をメインに資産運用している個人投資家です。AIと一緒に自作した自動売買システムのペーパー口座での実績と、自分の本資産の推移を毎週そのまま公開しています。新NISAは毎年満額まで使用中。専門家ではないので、初心者がつまずくところを自分の言葉で残しています。→ プロフィール
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の購入や売却を推奨するものではありません。株式・ETF・投資信託への投資には価格変動リスクがあり、元本割れの可能性があります。本文中の税率・計算例・制度の取り扱いなどは2026年8月時点のもので、税制改正や商品性の変更によって変わります。最新の情報は、国税庁・金融庁の公表資料、Vanguard・iShares(BlackRock)・State Street(SSGA)・Schwab等の各運用会社、ならびにご利用の証券会社の公式情報でご確認ください。税制の取り扱い(外国税額控除の可否や確定申告の有利不利など)は、ご自身の所得や家族構成によって結論が変わります。筆者は税理士ではありません。個別の税務相談は税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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