4%ルールとは、退職後に毎年、資産の4%ずつを取り崩していけば30年間はお金が尽きにくい、という考え方です。ただし2026年に新しく取り崩しを始める人への目安として、米国の投資調査会社モーニングスターが示した数字は4.0%ではなく3.9%でした(モーニングスター公式・2025年12月時点)。しかも日本で暮らす私たちには、ここから税金と為替という別の目減りが乗ります。この記事では4%ルールの中身と、日本で使うときに実際いくら手元に残るのかを、具体的な金額で確認します。
この記事を書いた人|ひざき
米国株をメインに資産運用中。AIと一緒に自動売買システムを自作し、ペーパー口座での売買実績を毎週そのまま公開しています。自分の資産額も毎週公開中。新NISAは毎年満額まで使っています。専門家ではなく、いま実際に手を動かしている個人投資家の目線で書いています。→ プロフィール
※筆者はまだ資産を取り崩す段階に入っていません。以下は原著論文と公式資料をもとにした整理で、「実際に取り崩してみてどうだったか」の体験談ではありません。そこは正直に線を引いておきます。
4%ルールとは?資産を25年分に見立てる考え方
4%ルールの出発点は、1998年2月に米トリニティ大学(テキサス州サンアントニオ)の3人の研究者が発表した論文(通称トリニティスタディ)です。1926〜1995年の実データを使い、S&P500と長期優良社債を組み合わせた資産から毎年取り崩したとき、資産が尽きずに済んだ期間の割合を集計しました。
30年の取り崩しで、引き出し額をインフレに合わせて増やしていく前提の場合、4%取り崩しの成功率は株式75%・債券25%で98%、株式50%・債券50%で95%、株式100%でも95%でした(AAII Journal 1998年2月号・原著論文)。この「ほぼ大丈夫」という結果が、4%という数字がひとり歩きするきっかけになりました。
逆算すると分かりやすくなります。年間支出の25倍の資産があれば、4%ルールの射程に入るということです。年300万円で暮らすなら7,500万円、年240万円なら6,000万円。FIRE(早期リタイア)の記事でよく「年間支出の25倍」と書かれているのは、この4%の裏返しです。
ここで大事なのは、4%ルールが成り立つ前提が3つあるということです。
- 資産が成長し続けること。現金だけで4%ずつ引き出せば、当たり前ですが25年でゼロになります。
- 期間が30年であること。原著論文も15〜30年を検証範囲としています。30代・40代でリタイアするなら40年、50年の取り崩しになり、前提が変わります。
- 米国株を含む分散ポートフォリオであること。日経平均が1989年12月末の最高値を更新するまでに34年2カ月かかった(日本経済新聞・2024年2月22日)ような相場を引くと、この前提は崩れます。
2026年の目安は4.0%ではなく3.9%だった
ここが今回いちばん伝えたい部分です。4%という数字は石碑に刻まれた定数ではなく、その時点の株価水準・債券利回り・インフレ見通しによって毎年動きます。
モーニングスターは毎年「The State of Retirement Income」という調査で、その年に取り崩しを始める人の安全な開始率を試算しています。2026年に取り崩しを始める人に向けた最新版(2025年版)の結論は3.9%で、株式比率30〜50%・期間30年・90%の確率で資金が残ることを条件とした数字でした(モーニングスター公式・2025年12月時点)。

過去の数字を並べると、2021年版が3.3%、2022年版が3.8%、2023年版が4.0%、2024年版が3.7%、そして最新の2025年版が3.9%です(同社公式・2025年12月時点)。3.3%から4.0%のあいだで動いているのが実態で、「4%」はその真ん中あたりを指す便利なラベルだった、という理解のほうが正確です。
1億円の資産で言えば、4.0%なら年400万円、3.9%なら年390万円、3.3%なら年330万円。同じ資産でも70万円の差が出ます。これは生活設計としては小さくない幅です。
意外:株の比率を上げると、安全な取り崩し率は下がる
私がこの調査を読んでいちばん驚いたのはここでした。3.9%という数字は株式比率30〜50%のポートフォリオに対するもので、同社は「株式比率を上げると値動きが荒くなるぶん、安全な開始率はむしろ下がる」と明記しています(モーニングスター公式・2025年12月時点)。
じつは1998年のトリニティスタディでも同じ現象が出ています。30年・4%(インフレ調整あり)の成功率は、株式100%の95%より株式75%・債券25%の98%のほうが高いのです(AAII Journal 1998年2月号)。論文も「低〜中程度の取り崩し率では、債券を混ぜたほうが成功率が上がる」と結論づけています。28年前の研究と最新の試算が、同じ方向を指しているわけです。
積み立て期の感覚だと「株100%のほうがリターンが高いのだから、たくさん引き出せるはず」と考えたくなります。ところが取り崩し期には、下落したタイミングで売らざるを得ない回数が効いてきます。暴落中に生活費を作るために安値で売ると、その分は二度と回復に参加できません。だから値動きの荒さそのものが敵になる、というわけです。
この構造は、バフェットの90/10ポートフォリオで「10%を短期国債に置く」ことの意味とも重なります。あの10%は利回りのためではなく、暴落中に株を売らずに済ませるためのバッファだ、と読むと腑に落ちます。取り崩しが近い人ほど、株100%から一歩引くという判断に合理性が出てきます。
なおモーニングスターの調査では、相場に応じて支出を上下させる「柔軟な取り崩し」を許容できる人なら、開始率を6%近くまで上げられるとも書かれています(同社公式・2025年12月時点)。固定額にこだわらず、下げ相場の年は旅行を我慢する、という調整ができるかどうかで、使える金額が1.5倍以上変わるということです。
日本で4%ルールを使うと、ここが削られる
ここからが日本の読者向けの本題です。米国発の4%ルールをそのまま持ってくると、少なくとも2つの目減りを見落とします。
1. 税金:課税口座なら利益部分に20.315%
まず押さえておきたいのは、大もとのトリニティスタディが「この研究は税金と売買コストを考慮していない」と論文中で明記していることです(AAII Journal 1998年2月号)。つまり4%という数字は、もともと税引き前の話でした。
日本では、上場株式・ETFを売って利益が出ると申告分離課税で20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)がかかります(国税庁タックスアンサー No.1463・2026年8月時点)。
よくある誤解は「売った金額全部に20%かかる」というものですが、これは違います。課税されるのは売却額のうち利益にあたる部分だけです。3,000万円の資産のうち元本が1,000万円なら、売却額の3分の2が利益という計算になります。
| 取り崩し率 | 年間の売却額 | うち利益(想定) | 税金 20.315% | 手取り | 月あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 4.0% | 120万円 | 80万円 | 約16.3万円 | 約103.7万円 | 約8.6万円 |
| 3.9% | 117万円 | 78万円 | 約15.8万円 | 約101.2万円 | 約8.4万円 |
| 3.0% | 90万円 | 60万円 | 約12.2万円 | 約77.8万円 | 約6.5万円 |
「4%取り崩せば月10万円」と思っていたものが、課税口座では月8.6万円になります。1.4万円の差は、家計では十分に体感できる大きさです。
一方、新NISA口座の中で持っている分は、売却益も分配金も非課税です(金融庁 NISA特設ウェブサイト・2026年8月時点)。つまり同じ3,000万円でも、NISA枠に入っている割合が高いほど、手取りベースの取り崩し率は4%に近づきます。取り崩し期を意識するなら、新NISAの枠をどう埋めておくかは税率そのものを動かす話になります。
2. 為替:ドル資産を円で使うときの目減り
米国株・米国ETFで資産を作った場合、生活費として使うのは円です。円高に振れた年は、ドルベースで4%取り崩しても、円ベースでは4%に届きません。逆に円安の年は多く受け取れます。
これは「損」ではなく変動なのですが、取り崩し期には固定費の支払いという待ったなしの用事があるので、変動そのものがストレスになります。生活費の1〜2年分を円の預金で持っておくのは、リターンを捨てて安心を買う行為として合理的だと私は考えています。なお外国税額控除まわりの話は米国ETFの分配金の税金の記事にまとめています。
私はこのルールをどう受け止めたか
正直に書くと、私はこれまで4%ルールを「FIREする人の話」として少し他人事に読んでいました。今回きちんと一次情報を読んで考えが変わったのは、4%が固定値ではなく毎年動く推計値だったという一点です。3.3%から4.0%のあいだで振れる数字を、ひとつの合言葉のように扱っていたのは私の雑さでした。
もうひとつ、株式比率を上げると安全な取り崩し率が下がるという結果は、いま積み立て中の自分にも効いてきます。私はまだ取り崩し期から遠いので株の比率を高く保っていますが、「いつかは債券や現金の比率を意識的に上げる局面が来る」ことを、資産形成の途中で知っておけたのは収穫でした。積み立て期の最適解と取り崩し期の最適解は別物だ、という当たり前のことを見落としがちです。
そして一番現実的な学びは、取り崩し率よりも、暴落中に売らずに済む仕組みを先に作るほうが効くということでした。これは狼狽売りの話とまったく同じ構造です。取り崩し期の暴落は、心理の問題ではなく資金繰りの問題として襲ってくるぶん、たちが悪いのだと思います。
よくある質問
Q. 4%ルールは日本人にも使える?
考え方の枠組みとしては使えますが、数字はそのままでは使えません。原著論文が税金・売買コストを考慮していないうえ(AAII Journal 1998年2月号)、日本の課税口座なら利益部分に20.315%(国税庁・2026年8月時点)がかかり、ドル資産なら為替の影響も乗るためです。手取りで考えるなら、目安を3%台前半に置いて計画を立て、実際が上振れたら余裕とみなすほうが安全側に倒せます。
Q. 結局、4%と3.9%のどちらを使えばいい?
どちらでも構いません。重要なのは小数点以下ではなく、この数字が毎年動くものだと知っておくことです。モーニングスターの試算でも2021年版から2025年版まで3.3%〜4.0%の幅があります(同社公式・2025年12月時点)。1つの数字を信じ込むより、幅で持っておくほうが実用的です。
Q. 株100%のほうが多く取り崩せるのでは?
いいえ、取り崩し期については逆になります。モーニングスターは株式比率を上げると値動きが荒くなるぶん、安全な開始率はむしろ下がると結論づけています(同社公式・2025年12月時点)。1998年のトリニティスタディでも、30年・4%の成功率は株式100%の95%より株式75%の98%が上でした。下落中に生活費のために売る回数が増えるほど、資産の回復力が削がれるためです。
Q. 新NISAで持っていれば4%そのまま使える?
税金の面では、そのとおりです。NISA口座内の売却益・分配金は非課税です(金融庁・2026年8月時点)。ただし為替の変動と、相場そのもののリスクは残ります。非課税は「目減りの一部が消える」という意味であって、元本が保証されるわけではありません。
Q. 取り崩しを始める前に、まず何をすればいい?
年間の生活費を実額で把握することです。取り崩し率の議論は、分母(資産)と分子(支出)が分かってはじめて意味を持ちます。年間支出が分からないまま「4%か3.9%か」を考えても、判断材料になりません。
まとめ
- 4%ルールは「年間支出の25倍の資産があれば30年もちやすい」という考え方。出発点は1998年のトリニティスタディで、30年・4%の成功率は株式75%で98%、株式50%で95%だった
- 4%は固定値ではない。モーニングスターの最新版(2025年版)の目安は3.9%で、2021年版からの5回では3.3%〜4.0%の幅で動いている(同社公式・2025年12月時点)
- 取り崩し期は株式比率を上げるほど安全な開始率が下がる。積み立て期とは最適解が違う
- 原著論文は税金を考慮していない。日本では課税口座の利益に20.315%(国税庁・2026年8月時点)。3,000万円の4%=年120万円でも、手取りは約103.7万円になる想定
- 新NISA枠は非課税なので、手取りベースの取り崩し率を実質的に押し上げる
米国株のはじめ方そのものを整理したい方は、米国株の始め方 完全ロードマップもあわせてどうぞ。
この記事のデータの出典
- トリニティスタディの成功率・検証条件・税金を考慮していない旨:Cooley, Hubbard, Walz「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」AAII Journal 1998年2月号(PDF)
- 安全な取り崩し率(3.9%・過去の推移・株式比率と柔軟な取り崩し):Morningstar「What is a Safe Retirement Withdrawal Rate for 2026?」(2025年12月時点)
- 上場株式等の譲渡益への課税(20.315%):国税庁 タックスアンサー No.1463(2026年8月時点)
- NISA制度の非課税の取り扱い:金融庁 NISA特設ウェブサイト(2026年8月時点)
筆者について|ひざき
米国株をメインに資産運用している個人投資家です。AIと一緒に自作した自動売買システムのペーパー口座での実績と、自分の資産額を毎週公開しています。新NISAは毎年満額まで使っています。金融の専門家ではありません。→ プロフィール
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の購入や売却、あるいは特定の取り崩し方法を推奨するものではありません。株式・ETF・投資信託への投資には価格変動リスクおよび為替変動リスクがあり、元本割れの可能性があります。本文中の取り崩し率・税率・試算した金額は2026年8月時点で確認できた公表資料にもとづく参考値で、市況・税制・制度の変更によって変動します。トリニティスタディの成功率は1926〜1995年の米国の過去データにもとづくもので、将来を保証しません。取り崩し率の推計はモーニングスターの2025年12月公表分です。最新の情報は、Vanguard・iShares(BlackRock)・State Street(SSGA)・Schwab等の各運用会社および各証券会社の公式情報、ならびに金融庁・国税庁の公表資料でご確認ください。税制の取り扱い(取得価額の計算・外国税額控除・確定申告の有利不利など)はご自身の状況によって結論が変わります。個別の税務相談は税理士等の専門家にご相談ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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