この記事を書いた人|ひざき
米国株をメインに資産運用中。AIと一緒に自動売買システムを自作し、ペーパー口座での売買実績を毎週そのまま公開しています。自分の資産額も毎週公開中。新NISAは毎年満額まで使っています。専門家ではなく、いま実際に手を動かしている個人投資家の目線で書いています。→ プロフィール
はじめに|VTとVTIの違いは「投資する国の範囲」だけ
VTとVTIの違いを一言でいうと、VTは全世界の株、VTIは米国の株だけを丸ごと買うETFです。運用会社はどちらも同じバンガード、思想も同じ「市場まるごと買い」。違うのは線を引く場所が国境の外か内か、それだけです。
結論から書くと、私はVTIのほうを選んで実際に保有しています。ただし「VTが劣っているから」ではありません。実際に公式データを並べてみると、過去10年のリターンはVTIが上でしたが、値動きのブレの大きさ(標準偏差)はVTのほうが小さいという、少し意外な結果でした。どちらを選ぶかは「リターンを取りにいくか、ブレを抑えるか」の好みの問題です。
※VTIは筆者が保有していますが、VTは保有していません。VTについては運用会社の公式情報にもとづく整理であり、「使ってみてどうだったか」という実体験ではありません。
VTとVTIの基本スペック比較
まず数字を並べます。すべてVTのバンガード公式ファクトシートとVTIのバンガード公式ファクトシート(いずれもバンガード公式・2026年6月30日時点)から引いたものです。
| 項目 | VT(全世界) | VTI(米国全体) |
|---|---|---|
| 正式名称 | Vanguard Total World Stock ETF | Vanguard Morningstar Total Stock Market ETF |
| 投資対象 | 先進国+新興国の47か国超 | 米国のみ |
| 連動指数 | FTSE Global All Cap Index | Morningstar US Total Market Index |
| 経費率 | 年0.06% | 年0.03% |
| 組入銘柄数 | 10,048銘柄 | 3,531銘柄 |
| 上位10銘柄の比率 | 21.7% | 33.4% |
| テクノロジー比率 | 33.3% | 41.0% |
| 分配金の頻度 | 四半期ごと | 四半期ごと |
| ETF純資産 | 約776億ドル | 約6,634億ドル |
| 設定日 | 2008年6月24日 | 2001年5月24日 |
※VTIは2026年7月29日に正式名称が変わりました。モーニングスターが2026年2月に指数の算出会社CRSPを買収したことにともない、ファンド名は「Vanguard Total Stock Market ETF」から「Vanguard Morningstar Total Stock Market ETF」へ、連動指数も「CRSP US Total Market Index」から「Morningstar US Total Market Index」へ改称されました(バンガード公式の告知・2026年7月29日付)。バンガードは名称が変わるだけで、投資方針・指数の作り方・組入銘柄・ティッカー(VTI)・経費率のいずれも変わらないと明言しています。VTはFTSEの指数に連動しているため、この改称の対象外です。少し前に書かれた解説記事はまだ旧名称のままのことが多いので、証券会社の画面で名前が違って見えても慌てなくて大丈夫です。
数字を見て最初に目に入るのは銘柄数の差だと思います。VTは1万銘柄超、VTIは3,531銘柄。ただしここで「VTのほうが3倍分散されている」と早合点しないでください。分散の実態を決めるのは銘柄数ではなく、上位の銘柄にどれだけ資金が偏っているかです。その点ではVTの上位10銘柄が21.7%、VTIが33.4%と、たしかにVTのほうが偏りは小さくなっています。
経費率の差(0.06%と0.03%)は、100万円あたり年300円の違いです。私は正直、この差だけで選ぶ理由にはならないと思っています。20年持っても数万円の話で、後述するリターン差やブレ幅の差のほうがはるかに大きいからです。
「全世界」といっても、6割は米国です
ここが初心者が一番つまずきやすいところだと思います。VTは「全世界株ETF」と呼ばれますが、中身の61.9%は米国株です(バンガード公式・2026年6月30日時点)。
| 国・地域 | VTでの比率 |
|---|---|
| 米国 | 61.9% |
| 日本 | 5.9% |
| 台湾 | 3.5% |
| イギリス | 3.1% |
| カナダ | 2.9% |
| 韓国 | 2.8% |
| 中国 | 2.6% |
さらに面白いのは上位10銘柄の顔ぶれがほとんど同じことです。1位から5位はどちらもNVIDIA、Apple、Alphabet、Microsoft、Amazonでまったく同じ順番。違いは、VTでは6位に台湾のTSMCが入り、そのぶんVTIでは10位に入っているイーライリリーが上位10から押し出される、という程度です。つまりVTを買っても、値動きの主役を握っているのは米国の巨大テック企業だ、ということになります。
「VTなら米国が沈んでも大丈夫」というイメージを持っていた人には、この6割という数字は意外だったのではないでしょうか。私も最初に公式データを見たとき、思っていたより米国色が濃いと感じました。もっとも、これはバンガードが恣意的に米国を重くしているわけではなく、世界の株式時価総額に対して米国が実際にこれだけの比率を占めている、というだけの話です。
過去10年のリターンとブレ幅を比べる
| 期間 | VT | VTI |
|---|---|---|
| 直近1年 | +24.28% | +23.16% |
| 3年(年率) | +19.69% | +20.43% |
| 5年(年率) | +10.89% | +12.24% |
| 10年(年率) | +12.82% | +15.04% |
| 標準偏差(直近3年) | 12.40% | 13.45% |
10年の年率で2.22ポイントの差。これが複利で効くとどうなるかを図にしました。

100万円を、それぞれの過去10年の年率リターン(VT 12.82%、VTI 15.04%)で10年間そのまま置いたと仮定すると、VTが約334万円、VTIが約406万円。差は約72万円になります。ただしこれはあくまで過去の実績をそのまま将来に当てはめた単純計算で、為替・税金・売買手数料は考慮していません。同じ計算を10年前にやっていたら、まったく違う答えが出ていたはずです。
一方で見落とされがちなのが最後の行、標準偏差(値動きのブレの大きさ)はVTのほうが小さいという点です。VT 12.40%に対しVTI 13.45%。リターンは低いけれど、そのぶん揺れも小さかった。「分散した対価としてリターンを少し諦める代わりに、夜よく眠れる」——VTはそういう商品だと私は理解しています。
日本で買うなら|新NISAと円建て投信版
VT・VTIはどちらも米国上場のETFなので、日本の証券会社では米ドル建てで買うことになります。新NISAで買う場合は、つみたて投資枠ではなく成長投資枠を使うのが基本です(対象商品は証券会社ごとに異なるので、必ず口座を持っている証券会社の対象一覧で確認してください)。詳しくは新NISAで米国ETFは買える?成長投資枠の対象と除外にまとめています。
「ドルを用意するのが面倒」という人には、同じ指数に連動する円建ての投資信託という選択肢もあります。代表的なのは、VTに投資する「楽天・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・VT)」、VTIに投資する「楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・VTI)」、そして「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」あたりです。円のまま100円から積み立てられ、分配金を自動で再投資してくれるのが利点です。
ただし投信版は本家ETFに信託報酬が上乗せされるため、コストは本家より高くなります。具体的な信託報酬は各ファンドの目論見書で必ず確認してください(この記事では実在を確認できた数値だけを載せる方針のため、あえて数字は書きません)。また、米国ETFを直接持つ場合は現地で10%源泉徴収された後に日本でも課税される「二重課税」の論点があります。これは米国ETFの分配金の税金は?二重課税と新NISAで詳しく整理しました。
私がVTIを選んだ理由(本音)
正直に書くと、私がVTIを選んだのは緻密な分析の結果ではありません。米国株のニュースを毎日追いかけていて、自分が中身を理解している市場に置いておきたかった、というのが一番大きい理由です。VTを持つなら、本来は欧州や新興国の情勢もある程度追えたほうがいい。私はそこまでの余力がありませんでした。
ただ、この記事のために公式データを並べ直してみて、考えが少し変わった部分もあります。標準偏差がVTのほうが小さいという事実は、私の中では「VT=リターンを諦める商品」という雑なイメージを壊すものでした。下落局面で狼狽売りをしてしまうタイプの人にとっては、VTのほうが最終的な成績が良くなる可能性は十分にあると思います。商品の優劣ではなく、自分がどこで耐えられなくなるかの問題です。
なお、米国の中でさらに絞り込みたい場合は、S&P500に連動するVOOという選択肢もあります。VTIとVOOの違いはVOOとVTIの比較記事に、VTIと高配当ETFの組み合わせについてはVTIとVYMの比較記事にまとめています。高配当系をまとめて見たい方は高配当ETF比較まとめが入口になります。
よくある質問
Q. VTとVTI、初心者はどっちから始めればいい?
「どちらでも大きく間違いではない」というのが正直な答えです。判断の分かれ目を1つ挙げるなら、今後10年も米国が世界を引っ張ると思うならVTI、それを自分では判断できないと思うならVT。VTは「未来を当てにいかない」という選択そのものです。
Q. VTを買えばVTIはいらない?
VTの61.9%はすでに米国株なので、VTを持ったうえでVTIも買うと、米国の比率をさらに上げる操作になります。「両方買って分散」にはなりません。どちらか一方に絞るか、比率を意識して組み合わせるかを決めてください。
Q. VTとVTIは新NISAで買える?
成長投資枠での取り扱いがあるかは証券会社ごとに異なります。対象になっている場合が多いですが、制度として全社共通で保証されているわけではないため、必ずご自身の口座の対象商品一覧で確認してください。つみたて投資枠では基本的に買えません。
Q. 「全世界」なのに米国が6割なのはなぜ?
VTが連動するFTSE Global All Cap Indexが、世界の株式を時価総額の大きさに応じて組み入れているからです。米国企業の時価総額が世界全体の約6割を占めている、という現実をそのまま映しています。国を均等に割り振る指数ではありません。
Q. 経費率0.03%と0.06%の差は気にすべき?
100万円あたり年300円の差です。気にしなくていい、とまでは言いませんが、この差だけで銘柄を決めるのは優先順位が違うと私は考えています。投資対象の範囲を先に決めて、そのあとでコストを見るほうが順番として自然です。
Q. VTIの名前が「Vanguard Morningstar〜」に変わったけど影響ある?
実質的な影響はありません。2026年7月29日に名称と連動指数の呼び名が変わっただけで、バンガードは投資方針・指数の作り方・組入銘柄・ティッカー(VTI)・経費率のいずれも変わらないと公式に告知しています。保有している人が何か手続きをする必要もありません。
まとめ
- VTは全世界(47か国超・10,048銘柄)、VTIは米国のみ(3,531銘柄)。運用会社も思想も同じで、違うのは投資する範囲だけ
- VTIは2026年7月29日に「Vanguard Morningstar Total Stock Market ETF」へ改称。名前だけの変更で中身は不変
- VTの中身は61.9%が米国。上位10銘柄の顔ぶれはVTIとほぼ同じ
- 過去10年の年率はVTI +15.04%、VT +12.82%。ただしブレの大きさはVTのほうが小さい
- 経費率はVTI 0.03%、VT 0.06%。差は100万円あたり年300円で、決め手にはなりにくい
- ドルを扱いたくないなら円建ての投信版という手もある。信託報酬は必ず目論見書で確認を
数字だけ見ればVTIに軍配が上がる10年でしたが、それはたまたま米国が強かった10年だったとも言えます。私はVTIを持ち続けますが、それは「VTIが正解だから」ではなく、自分が理解できる範囲に置いておきたいからです。あなたはどちらの理由で選びますか。
この記事の数値はすべて、バンガード公式の商品ページ(VT/VTI)およびファクトシート(2026年6月30日時点)で確認したものです。VTIの名称変更については、バンガード公式の告知ページ(2026年7月29日付)で確認しています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の購入や売却を推奨するものではありません。株式・ETF・投資信託への投資には価格変動リスクがあり、元本割れの可能性があります。海外資産には為替変動リスク、新興国を含む商品にはカントリーリスクも伴います。本文中の経費率・組入銘柄数・国別配分・トータルリターン・標準偏差などの数値は2026年6月30日時点のもので、市況や商品性の変更によって変動します。最新の情報は、Vanguard(バンガード)および楽天投信投資顧問・SBIアセットマネジメント等の各運用会社、ならびに各証券会社の公式情報、金融庁・国税庁の公表資料でご確認ください。税制の取り扱い(外国税額控除・確定申告の有利不利など)はご自身の状況によって結論が変わります。個別の税務相談は税理士等の専門家にご相談ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


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