この記事を書いた人|ひざき
米国株をメインに資産運用中。AIと一緒に自動売買システムを自作し、ペーパー口座での売買実績を毎週そのまま公開しています。自分の資産額も毎週公開中。新NISAは毎年満額まで使っています。専門家ではなく、いま実際に手を動かしている個人投資家の目線で書いています。→ プロフィール
はじめに
米国株の為替リスクとは、株価が1円も動いていなくても、円とドルの交換レートが変わるだけで、円で見た損益が変わってしまうことです。結論から書くと、円安になれば円で見た資産は増え、円高になれば減ります。1ドル150円のときに買った米国株を160円のときに売れば、株価が横ばいでも円換算では約6.7%のプラス。逆に140円なら約6.7%のマイナスです。
この記事は「米国株を始めてみたけれど、為替で結局いくら変わるのかがピンとこない」という方に向けて書いています。具体的な金額の表、この4年で実際に何が起きたか(FRBの公式データで確認)、為替リスクを減らす選択肢とそのコスト、そして意外と知られていない税金の扱いまで、順番に整理します。

米国株の為替リスクの仕組み
米国株は当然ながらドルで取引されます。日本の証券会社で「円貨決済」を選んでいても、内部では円をドルに替えて買い、売るときにドルを円に戻しているだけです。つまり米国株を持っている人は、意識していなくても「株」と「ドル」の2つを同時に持っている状態になります。
損益が動く要因も、したがって2つあります。株価そのものの上下と、ドルの価値の上下です。この2つは別々に動くので、株価が上がったのに円で見たら減っていた、あるいは株価は下がったのに円では増えていた、ということが普通に起こります。ここが初心者のいちばんのつまずきポイントだと私は思っています。

数字で見る:為替だけで損益はいくら変わるのか
1ドル=150円のときに100万円を米国株に投資した(約6,667ドルぶん買った)として、1年後の円換算額がどうなるかを並べてみます。
| 株価の変化 | 140円(円高) | 150円(変化なし) | 160円(円安) |
|---|---|---|---|
| +10% | 102.7万円 | 110.0万円 | 117.3万円 |
| 変わらず | 93.3万円 | 100.0万円 | 106.7万円 |
| -10% | 84.0万円 | 90.0万円 | 96.0万円 |
注目してほしいのは右上と左下です。株価が10%上がっても円高が進めば+2.7%しか残らず、株価が10%下がっても円安なら-4.0%で済む。±10円の為替変動は、±6.7%の株価変動と同じインパクトを持ちます。「米国株は為替がおまけ」ではなく、短期では為替のほうが効くことすらあるということです。
この4年、円安は米国株の強い追い風だった
「為替は結局どっちに動いているのか」を、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表している公式の為替統計で確認してみます。数字はすべてFRBの発表値です。
| 期間 | 1ドルあたり |
|---|---|
| 2022年(年平均) | 131.46円 |
| 2023年(年平均) | 140.50円 |
| 2024年(年平均) | 151.46円 |
| 2025年(年平均) | 149.57円 |
| 2026年8月28日 | 159.97円 |
2022年の年平均131.46円から2026年8月28日の159.97円までで、ドルは円に対して約21.7%上昇しました(FRB公式・2026年8月時点)。この間に米国株を持っていた日本の投資家は、株価の上昇とは別に、為替だけで2割ぶんの追い風を受けていたことになります。
ただし一本調子ではありません。2024年の年平均151.46円に対して2025年は149.57円と、年で見れば円高に振れた年もあります。「円安はずっと続く」という前提でポートフォリオを組むのは危ないと私が思うのは、この1年ぶんの逆流があるからです。
為替リスクを減らす選択肢と、そのコスト
※為替ヘッジありの投資信託は、私自身は保有していません。以下は各運用会社が公表しているしくみの説明にもとづく整理で、「使ってみてどうだったか」の実体験ではありません。
| 方法 | 為替リスク | 注意点 |
|---|---|---|
| 為替ヘッジありの投資信託 | 大きく抑えられる | 日米の短期金利差ぶんのコストが毎年かかる |
| 円建ての投資信託(ヘッジなし) | そのまま残る | 円で買えて手間は減るが、為替の影響は米国ETFと同じ |
| ドルのまま持ち続ける | 円に換えるまで確定しない | いずれ円で使うなら、そのときのレートを受け入れることになる |
重要なのは「ヘッジはタダではない」ことです。為替ヘッジのコストは、おおむね2国間の短期金利差を反映します。2026年8月時点の政策金利は、米国が年3.50〜3.75%(FOMC・2026年7月会合で据え置き)、日本が年1.0%程度(日本銀行・2026年6月16日決定)。単純な差は年2.5〜2.75%前後です。実際のコストは商品や市場環境で変わりますが、この水準が毎年リターンから引かれると考えると、長期の積立で使うのは私には割高に感じます。
なお、円建ての投資信託を選べば為替リスクが消えると誤解されがちですが、中身が米国株なら為替の影響はそのまま受けます。新NISAで米国ETFを買う場合も同じです。ヘッジの有無で決まるのであって、円で買うか外貨で買うかでは決まりません。
見落としがち:為替差益は「株の利益」として課税される
これは知らない人が多い論点です。米国株を売って利益が出たとき、そのうち「株価が上がったぶん」と「円安になったぶん」を分けて申告する必要はあるのでしょうか。
国税庁の質疑応答事例「外貨建取引による株式の譲渡による所得」は、為替差損益にあたる部分を雑所得として区分する必要はないとしています。譲渡代金を円換算した金額が、そのまま株式の譲渡収入として扱われるためです(国税庁・令和7年8月1日現在の法令等に基づく記載)。
つまり、円安で膨らんだ利益も含めて「株の売却益」としてまとめて課税されます。株価がドルベースでは横ばい、あるいは少し下がっていても、円安のせいで円換算では利益が出ていて課税対象になる、ということが起こり得るわけです。配当にかかる税金は米国ETFの分配金の税金と二重課税の記事で別途まとめています。
私はどうしているか(本音)
私は自分の資産額を毎週円で公開していますが、これをやっていていちばん実感するのが為替の存在感です。米国市場が動いていない週でも、円建ての数字だけは為替で普通に上下します。株を1株も売り買いしていないのに資産額が変わるのは、最初はかなり気持ち悪いものでした。
そのうえで、私は為替ヘッジは使わず、ヘッジなしのまま持っています。理由は3つです。1つめは、年2%台のヘッジコストを何十年も払い続けるのは、長期の複利にとって明らかに重いから。2つめは、為替の方向を当てる自信が私にはまったくないから。3つめは、日本で暮らしていて生活費も年金も円建てなので、資産の一部が外貨建てであること自体はむしろ分散になっていると考えているからです。
正直に書くと、ここ数年の私の資産増加のうち、そこそこの部分は「円安のおかげ」です。これは自分の投資判断が優れていた結果ではありません。実力と為替の追い風を混同しないことが、この記事でいちばん伝えたいことかもしれません。円高に振れた年には、同じ理屈で数字が悪くなります。そのときに慌てて売らないための準備が、いま為替の仕組みを理解しておくことだと思っています。
なお、資産を取り崩す段階になると為替の影響はさらに重くなります。取り崩しの考え方は4%ルールの記事にまとめてあります。
よくある質問
Q. 米国株にとって、円安と円高はどちらが有利ですか?
すでに保有している人には円安が有利、これから買い増していく人には円高が有利です。同じ人でも立場は年齢とともに変わります。積立期は円高のほうが多くの株数を買え、取り崩し期は円安のほうが受け取れる円が増えます。「円安=いいこと」と単純に覚えないほうがいいです。
Q. 為替ヘッジありの投資信託を選べば、為替リスクはなくなりますか?
大きく抑えられますが、ゼロにはならず、代わりにヘッジコストがかかります。コストは日米の短期金利差をおおむね反映し、2026年8月時点の政策金利の差は年2.5〜2.75%前後です(FOMC・日本銀行の公表資料より算出)。短期の値動きを抑えたい人には合いますが、長期積立では負担が積み上がります。
Q. 新NISAで米国株を買えば、為替で増えた分も非課税ですか?
非課税です。売却益は円換算した金額で計算されるため、円安で膨らんだ部分も含めて課税されません。ただし為替で減る可能性は消えませんし、NISA口座の損失は他の口座と損益通算できない点は変わりません。対象商品は新NISAの成長投資枠と米国ETFで確認してください。
Q. 円建ての投資信託なら為替リスクはありませんか?
あります。円で買えて円で基準価額が表示されるだけで、中身が米国株なら為替の影響はそのまま基準価額に反映されます。為替リスクの有無を決めるのは「ヘッジありか、なしか」であって、円で買うか外貨で買うかではありません。
Q. 為替が読めないなら、米国株はやめたほうがいいですか?
私は、読めないことを前提に組めばいいと考えています。具体的には、買うタイミングを分散する(毎月一定額の積立)、生活防衛資金は円で確保しておく、そして為替で数字が上下してもルールを変えない、の3つです。プロでも為替の方向は当てられないので、当てにいかない設計にするのが現実的です。
まとめ
- 米国株の為替リスクとは、株価が動かなくても円ドルのレート次第で円建ての損益が変わること
- 1ドル=150円が160円になれば約+6.7%、140円になれば約-6.7%。±10円は±6.7%の株価変動に相当する
- 2022年の年平均131.46円から2026年8月28日の159.97円まで、ドルは約21.7%上昇(FRB公式・2026年8月時点)。この間の米国株投資には為替の追い風があった
- ただし2025年は前年より円高。「円安がずっと続く」前提は避ける
- 為替ヘッジはリスクを抑えられるが、日米の短期金利差ぶんのコストがかかる
- 売却益は円換算後の金額で課税される。為替差益だけを分けて申告する必要はない(国税庁)
為替は「わからないから怖い」ものですが、仕組み自体は掛け算1つです。数字で一度確認しておけば、円高の年に慌てて売る確率はかなり下げられます。米国株を始めたばかりの方は、米国株の始め方ロードマップや高配当ETF比較まとめもあわせてどうぞ。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の購入や売却を推奨するものではありません。株式・ETF・投資信託への投資には価格変動リスクに加えて為替変動リスクがあり、円高が進んだ場合には円換算での元本割れが生じる可能性があります。本文中の為替レート・政策金利・試算の数値は2026年8月時点のもので、市況や政策の変更によって変動します。最新の情報は、FRB・日本銀行・金融庁・国税庁の公表資料、および各運用会社(Vanguard、iShares(BlackRock)、State Street(SSGA)、Schwab、楽天投信投資顧問、SBIアセットマネジメント等)と各証券会社の公式情報でご確認ください。税制の取り扱い(外国税額控除・確定申告の有利不利など)はご自身の状況によって結論が変わります。個別の税務相談は税理士等の専門家にご相談ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


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